三階旅館の歴史
1350年の歴史ある有福温泉の中心部に佇む木造三階建ての旅館。
その歴史は、200年前に遡ります。
お殿様の別邸として建築された特別な建物
時は江戸時代末期。有福温泉から40kmほど離れた三隅(みすみ)という地にお殿様がおられました。
そのお殿様の隠居用の別邸として建てられたのが後に三階旅館となる建物でした。
温泉街を見渡すことができる3階建て。
湯町でお殿様が隠居後の日々を穏やかに、上品に楽しめるよう考えられ当時の職人が技の限りをつくして建てられたに違いありません。
この建物ができた時、当時の湯町はどんなに賑わったことでしょう。
『三階さん』
明治維新の後、お殿様の別邸として建てられた建物は、
振縄館(しんじょうかん)という名前で旅館として開業いたしました。
しかし、当時木造三階建ての建物が非常に珍しく、
街の人から「三階さん」と呼ばれていました。
そこで、その愛情を持って呼ばれた名前を使い「三階旅館」と名称を改めました。
いまも残る純和風の趣
三階旅館に訪れる際には、是非、建物を見上げて見てください。
雨戸をしまう戸袋や屋根を守る鬼瓦は当時のまま。
工夫を凝らした江戸時代の職人の技を見ることができます。
玄関を入って右側においてある飾りは、一番古い欄間(らんま)をそのまま飾りとしておきました。
梁(はり)や3階にある二部屋の格子は、昔のままのもの。
今ではめったに見ることができない素材や職人芸を楽しんでいただけます。
開業から今日まで数回の改修を行ってきていますが、純和風の趣は残したまま。
昔の生活を知るつくりや建て方を研究しにこられる方も多くいらっしゃいます。
本物の素材と歴史だけがかもし出せる「純和風」。
懐かしい、落ち着くといわれる秘密はそこにあるのかもしれません。
日本に残る木造三階建ての旅館は十数件。
そのうちの一件として今後も守り残していきたいと考えています。